羊羹は見るからに「あんこのかたまり」といった風貌で、特に「和菓子が好き」という方でなければとっつきにくいイメージのある和菓子ではないでしょうか。

今回は、そんな羊羹の秘密について紹介します。

羊羹は大きく分けると2種類で、寒天で固める「練り羊羹」と、小麦粉や葛粉などで固める「蒸し羊羹」があります。

安いもの、高価なものも含め、市場に出回っている羊羹は、主に練り羊羹である場合がほとんどです。

なお、夏によく出回る「水羊羹」は、羊羹を固める際に寒天を少なめにして、ゆるめに固めた練り羊羹となります。

この水羊羹には、竹の筒に詰められているものなどもあり、食べる人の目を涼しませてくれます。

その他、羊羹には小豆の他に、さつまいもを使う芋羊羹や、柿を入れて作る柿羊羹、栗が丸ごと入った栗羊羹や、白いインゲン豆で作った白い羊羹、抹茶入のもの、粒あんが散りばめられたものなど様々な種類があります。

それぞれ素材によっては、寒天を使用し型に流し込んで固めたりする他、蒸す形で固めるものも、中にはあります。

さて、羊羹を数える時には、「一棹(さお)」と数えますが、これには、昔使っていた羊羹の型の呼び方に秘密があります。

練り羊羹は江戸時代には、人々に親しまれていましたが、その頃は「船」と呼ばれる箱を使い、そこへ流し込んで、固めて作っていました。一船で12棹になるほどの大きさだったようです。

「船には棹(さお)が付き物だ」ということで、羊羹を数える際には「一棹、二棹」と数えるようになったと言われています。

その他、練り羊羹は糖分が多いことで、真空パックのものは常温でも長期の保存が可能となります。そのため保存食としても重宝されています。

ところで、羊羹の羊はヒツジという字です。「どこもヒツジに関係ないのに、不思議だ」と思ったことはありませんか?

「羊羹」とは鎌倉時代の頃、僧侶などにより中国から伝わったものです。しかし、元々は甘いお菓子ではありませんでした。

「羊羹」とは、訓読みで読むと「ひつじ(の)あつもの」と読むことができます。「あつもの」とは何のことかというと、温かい汁物のことです。

「あつものに懲りてなますを吹くなかれ」ということわざがありますが、その「あつもの」と同じ意味です。つまり、伝わった当初の羊羹とは、点心の一種であり「羊の肉を使った温かい汁物」だったのです。

しかし、日本では宗教的にそのような肉を食べる習慣がなかったためと、点心は僧侶の間食としても食ベられる必要があったため、肉は使わずに、豆類などで代用して作られるようになりました。

最初は豆類などを使った汁物であった羊羹は、その後、身につけて修行に出るなど、携帯したり保存したりする目的で、蒸し羊羹に姿を変えました。

この蒸し羊羹とは、多少の保存ができるように、小豆などの豆類に砂糖、葛粉や米の粉などを混ぜ、長い木枠に入れて蒸し固めたものだったようです。

その後、現在のような、甘い練り羊羹へと変わり始めたのは、江戸時代の頃のことです。甘い砂糖が普及し、この頃には寒天の発見もされたことで、なめらかな練り羊羹が作られるようになりました。

羊羹は、食物繊維が豊富な寒天と、ビタミンなどが多く含まれる小豆でできた、とても健康的な和菓子です。夏の暑い日にはぜひ、よく冷やした水羊羹で夏バテ予防をしてください。