夏に欠かせない和菓子の一つが、わらび餅ですね。透き通ったフルフルでモチモチのお餅に、黒密ときな粉の合う、スーパーでも手軽に買うことのできる和菓子の一つです。

しかし、わらび餅の素となる「わらび粉」とは、本来とても高価なものです。

では、スーパーなどで80円から120円ほどで売られている「わらび餅」とは、いったい何からできているのでしょうか。

わらび粉とは、植物のわらびの根からとれるデンプンです。わらびの根も貴重である上に、その根から粉を取り出すのにもたいへん手間暇がかかります。

その作業は、根をすり下ろしたものを何度も漉すことを繰り返し、不純物を取り除きながら、水を加えては沈殿させたりして、根に含まれるデンプンを丁寧に抽出します。

たくさんの根っこを用意しても、そこから取れるのは、ほんのわずかな量であり、例えば100gの根っこから取れるのは、わずか5g程度のわらび粉だと言われています。

また、本物のわらび粉で作られたわらび餅には、その色に特徴があるとされています。それは、少し黒ずんだような色をしていたり、濁った飴色をしているということです。

スーパーなどに並んでいるわらび餅は、本物のわらび餅を模したものであり、わらび粉自体は使われていない場合がほとんどです。では、何を使ってあのフルフル、モチモチ感を出しているのでしょう。

それには、わらび粉よりも簡単に手に入れることができる、さつまいもなどから取れる「甘藷デンプン」やタピオカから取れる「タピオカデンプン」、じゃがいもから取れる「馬鈴薯デンプン」や片栗粉などです。

スーパーなどで並んでいるわらび餅は、はっきり言ってしまえば「さつまいもデンプン餅」や「タピオカ餅」ということになってしまうのですね。

しかしながら、本物のわらび粉にはたいへん高価である、という弱点と本物のわらび餅にも、市場に出回れない弱点があります。

それらのなんちゃってわらび餅も「わらび餅を何とかして食べたい!」と考えた人達が一生懸命作り出したもので、おいしい和菓子の一つなのです。

不純物ゼロの「100%のわらび粉でできた本物しか作ってはいけない」とすると流通するものは無くなってしまうかもしれません。

というのも、高価なわらび粉100%でできたわらび餅はたいへん高価となる上、出来上がったものを保存することが難しく、劣化もとても早いのです。

その劣化は、作られてすぐから始まるため、わらび餅が一番おいしく食べられるのはもちろん出来立てです。その後、長くとも2日間が限界だと言われています。

「冷蔵庫に入れれば鮮度が保たれるのでは?」という意見もあるかと思いますが、わらび粉100%のものは冷蔵すると弾力が失われ、食感やのどごしが格段に落ちてしまいます。

私達が安、気軽にわらび餅を口にできるのは、本物のそれらの特徴を補いつつ開発された「わらび餅っぽいもの」が存在するおかげだと言えます。

「これは、本物のわらび餅ではない」とわかっていれば、それで良いと思います。京都の祇園の方の甘味処では、本物のわらび餅を食べられるお店もあります。

本物の味ってどんな味よ?と気になった方は、ぜひ足を運んでみてください。きっと「これが!?」と驚かれることでしょう。