「らくがん」というと「お盆に出回る、ハスや菊の花、またナスなどの形の飾り物」を思い浮かべる方がほとんどなのではないでしょうか。

「食べ物ではない」「ただの飾り物だ」と思われている方もおられるかと思うので、らくがんとは何か?というところから紹介していきます。

らくがんとは、漢字で書くと「落雁」となります。和菓子の分類では、金平糖や、おせんべいの八つ橋、おこしなどと共に「干菓子」というお菓子に分類される、水分量が15%以下のお菓子です。

らくがんの原料は、「落雁粉」と「砂糖や水飴」という、ごくシンプルな材料でできています。そのため、らくがんを作る際には、材料選びもとても大切な作業となります。

この「落雁粉」というのは、一度蒸した餅米を干してカチカチに乾燥させ、細かく粉状にひいたものを、さらに炒ったものです。

この落雁粉と砂糖や水飴を混ぜ、色々な形の「専用の木型」に押し固めたものを、乾燥させて仕上げます。材料も作り方も、とてもシンプルなお菓子です。

この専用の木型は、らくがんを作っている老舗の和菓子屋では、そこで代々使用している歴史的な価値があるものが置いてある場合もあります。

らくがんのおいしいところは、その口溶けです。口に入れた瞬間に、ほろっとほどけるようなその食感は、お茶うけにぴったりです。

そのため、特に良い素材でできているらくがんは、茶道のお茶の席で使用されることも多々あります。

というのも、作る際の木型や、落雁粉に着色する色によって、色々な季節を表す形のものを作り出すことができ、一年を通して旬のお菓子になることができるからです。

お盆にスーパーに並ぶらくがんは、菊などが多いですが、お茶の席で用意されるものには、水紋を表したものや、イチョウの葉、アジサイの花や、亀に鶴、鳩など、色々なものがあります。

その見た目に、箱を開けた瞬間に「わあ…」という歓声がこぼれそうなほど、可愛いものが多いです。

もし京都などで見かけたら、ぜひお土産に持って帰ってみてくださいね。きっとその美しさと可愛らしさに驚かれることでしょう。

さて、「落ちる雁」と書くらくがんですが、これにはどういった起源があるのでしょうか。

…これには、いくつかの説があります。有力なある一説では、最初に作られたらくがんの見た目が関係している、という説です。

当初のらくがんは、その表面に黒ごまが散らしてあったようです。

その様子が、滋賀県の優れた風景「近江八景」の一つ、大津市の浮御堂の辺りである「堅田落雁(かただのらくがん)」という風景に似ていたそうです。

その風景とは、琵琶湖の上を夕日の中、黒い雁の影が並んで飛ぶ風景であり、それに似ているということから落雁と呼ばれるようになったと言われています。

しかし京都の方では、近江八景についての逸話が語られる以前から、「このお菓子は、らくがんと呼ばれていた」という説もあり、明確な理由は明らかになっていません。