関西には、水無月(みなづき)という和菓子があります。関東ではあまり見られませんが、これはどのような和菓子なのでしょうか。

「水無月」とは6月の別名でもありますが、和菓子の一つであり、底辺の長い三角形の形に切り分けられたういろうの一種です。

関東の方ではあまり見られませんが、関西の方では特に、6月頃になると出回る和菓子です。

使用されるういろうの生地には、白いものの他に、緑の美しい抹茶味や、香り豊かな黒糖味のものがあります。

生地の上には甘く蒸した小豆がびっしり乗っているものや、パラパラとちりばめられているものがあります。食べると小豆のホロホロ感とういろうのムチムチ感が味わえます。

さて、この水無月の三角形は何を表しているのか、というと、暑くなり始める季節に備えて「氷を食べて無病を願う」という行事があったことから「氷の形」であるとも、「龍神の鱗の形」であるとも言われます。

現代の「かき氷」のようなものは、平安時代には既にあったと言われていますが、冷凍庫の無い時代に氷を溶かさず保存しておくことはたいへんなことで、貴族にとっても氷はとても貴重なものでした。

その氷を保存しておくには「氷室」と呼ばれる、山中の洞窟などを利用して保冷していました。

この氷室は貴族でしか用意できない施設であり、一般の庶民にとって「かき氷」はとても手に届かない菓子でした。

そこで氷の代わりとして誕生した和菓子が「水無月」だと言われています。特に白いういろうの生地でできた水無月は、見た目が氷に似て涼しげです。

なお、氷を食べる行事とは「(現在では旧暦の)6月1日に氷を食べると、夏の間は病にかからず夏バテもせず、元気に過ごせる」という言い伝えによるものです。

この行事のことを、6月1日に氷を食べる「氷の節句」または「氷の朔日」と呼んでいました。ちなみに旧暦の6月1日とは、現在の6月27日頃になります。

貴族はこの日に氷を食べましたが、一般庶民にはもちろん氷は手に入りません。そこで代わりに水無月を食べて、無病息災や夏バテ防止を願ったと言われています。

この水無月、特に京都の方では、6月頃から普通に和菓子屋などに出回る和菓子です。また、あまりにも普通にあるために、京都の方は「日本全国にある」と思い込んでいる方も多いようです。

普段、自分の身の回りにあるものでも、地域によっては無い場合がある、というのは気付けば面白いことですね。

そこで「水無月は東京の方でも買えるのか?」ということを調べてみたところ、どうやら買えそうです。以前、新宿の百貨店で6月限定で売り出されていました。

また銀座の百貨店内の和菓子屋さんや、東京では有名な、とらやさんなども6月の間限定で、置いてあるようです。

また、京都の老舗の和菓子屋ではインターネットで買えるところもあるようですよ。

京都以外でも、京都の和菓子が買える…「その場に行かないと食べられない」という特別感は減りますが、情報社会や技術発展の素晴らしさを感じますね。

しかし、夏の暑い時季に盆地の京都で、風鈴の音や蝉の声を聴きながら食べる和菓子も格別です。やはり空気までは現地に行かないと味わえませんね。