草餅は、今では一年中見られる和菓子で、草の香りが爽やかなのが特徴ですね。「あの爽やかな風味とあんことの組み合わせが大好き」という方も多いのではないでしょうか。

では、緑色とその香りも爽やかな草餅の旬ですが、元々はいつだったのでしょうか。

本来、草餅は春の和菓子とされ、3月3日の桃の節句である「ひな祭り」の日に菱餅などと一緒に供えられ、食べられていたものです。

その緑色は、ヨモギの葉を餅米につき込むことで作られます。見た目にも爽やかな緑の生地は、菜の花ともよく合い、春を感じられる風情に仕上がります。

それでは、なぜ、3月3日の桃の節句にヨモギの餅が選ばれたのでしょうか?…その昔、ヨモギは「魔除草」とも呼ばれており、人々に親しまれていました。

実際、様々な有効成分を含む「薬草」でもあるヨモギは、身体に良いとされる多くの成分から「ハーブの女王」という別名もあるほどです。

食物繊維や、血液中のヘモグロビンの生成を助けるクロロフィル、βカロチン、ビタミンB1やB2、リノール酸などが豊富な上、アロマ効果や殺菌作用もあるヨモギ…。

あなたも小さい頃に、野山でケガをしたらヨモギを、と母親やおばあちゃんに言われたことが、あるのではないでしょうか。

また最近では、ヨモギを使った美容方法である「ヨモギ蒸し」が、若い方の間で話題を呼んでいますが、このヨモギ蒸しとは、韓国で600年前から行われてきた民間療法です。

さらに日本でも、江戸時代という古の時代から行われている「お灸」という民間療法がありますが、ヨモギは、これに使うもぐさの原料にもなっています。

以上のことからも、たいへん身体に良い植物と言えるでしょう。

ヨモギは3月から5月初旬にかけて柔らかい新芽が出てきます。食用にするのには、特にこの時季が旬と言えます。

身体に有効な成分が多く、健康に良いことと、3月頃の新芽のヨモギが食用にするのには良いことなどが、3月の桃の節句に使われる理由と言えるでしょう。

さて、ここまでで、ヨモギが3月3日の節句に選ばれたのには、その香りが良いことや、有効な成分のせいだ、という紹介をしました。

その他にも理由があります。それは、ヨモギはとても繁殖力の高い植物だという点です。

ヨモギの根っこはとても丈夫で引き抜くのは困難です。さらに、除草剤にも負けないほど、地下に地下に伸びている場合もあります。

その丈夫な根っこを取り去らない限りは、葉っぱは成長し続けてしまいます。しかし根っこがとても丈夫な上、地下に伸びている部分も多いため、それを取り去るのは一苦労ということです。

そんなヨモギに対して「子孫繁栄」という思いを重ね、女の子桃の節句のお祝いをしたのが、ヨモギでできた草餅の由来です。

寒い冬から春になり、柔らかく芽吹いたヨモギの新芽を使った草餅は、食べるだけで「ヨモギが春に向けて蓄えてきたエネルギーを頂ける」、そんな気がする和菓子ですね。

また、お花見の際には、ぜひ一緒に持って行ってください。ヨモギは肝臓にも良い、と言われているので花見酒をされる方にはちょうどよい花見だんごになりますよ。