「かしわ餅」といえば、5月5日の端午の節句の頃に出回る和菓子ですね。そのため、この節句のお祝いの席にも登場することが多く、若い方にもいくらか馴染みのある和菓子だと思います。

それでは、5月5日の端午の節句に柏餅を食べるのには、どのような理由があるのでしょうか。

かしわ餅とは、かしわの葉が使用されているお餅で「柏餅」と書きます。

うるち米をひいて作られた上新粉をこねて餅状の生地にし、それでこしあんや粒あん、関西の方では小豆の他に、白みそでできた甘辛いあんこを包みます。

それぞれのあんこを包んだものを、塩漬けにした一枚の柏(槲)の葉で巻きます。

この時の葉っぱの裏表で中身の違いを表すとされ、表側が餅に密着するように巻いたものは、中身があんこで、その逆の葉が表に出ているものだと、中身は白みそあんだとされています。

かしわ餅の葉っぱは、香り付けや、餅表面の乾燥を防ぐ目的として巻いていあるものであり、また、食べるのにはちょっとかたいため、外して食べるのが一般的です。

それでは、どうしてこのかしわの葉が使われるようになったのでしょうか?

その元々の理由は、かしわの葉の代わりに使われていた「サルトリイバラ」の葉の代用品であったようです。

江戸時代、江戸に田舎から伝わってきたかしわ餅ですが、その葉に使用されるのは「サルトリイバラ」の葉が一般的だったようです。

現在でも四国地方などでは、かしわ餅の葉をサルトリイバラの葉で作っているところがあります。

しかし、サルトリイバラの葉は田舎の方でしか取れない葉だったようです。その代わりに、江戸では、江戸でも手に入りやすい、かしわの葉を使い始めたのが元々の理由です。

葉っぱから良い香りがすること、そして、子孫繁栄の縁起物であるとされ、何とか江戸の人々に定着する形となりました。

かしわの葉は、冬になっても落ちることがなく、次の年に新芽が芽吹いてくるまで、古い葉がそのまま残ります。そのことから「代が途切れることがない、縁起物である」とされたのです。

それが、端午の節句に用いられるようになった由来だと、言われています。

ちなみに、この端午の節句、関西ではかしわ餅よりも、ちまきを食べる方が一般的です。「ちまき」といっても中華料理や東南アジア料理の一種である、竹や葦の葉で包んだおこわのようなものではありません。

関西の方で、端午の節句に食べられる「ちまき」は、中国から伝わったものにはかわりありませんが、甘い笹餅のようなものです。

餅米や米の粉などをこねて蒸し、ついたりしたものを菖蒲の葉や、笹の葉で細長い円錐形に整えながら包みます。

その後、わらで巻き縛って崩れないように形を整えたものを、蒸す、煮るなどして仕上げます。

その他、笹の葉を巻いて作る和菓子は、この、ちまきから「麩饅頭」や「笹の葉を巻いて作る羊羹」などに派生し、和菓子の幅を拡げました。

さて、できがったちまきは、笹の葉を剥いて食べます。食べると笹の良い香りが口いっぱいに広がります。中身は何も入ってないものや、あんこが入っているもの、また餅の生地自体にヨモギが入っているものもあります。

ところで、なぜ「ちまき」というのかというと、元々は茅(ちがや)の葉で巻いたから「茅巻き」である、とされています。

茅の代わりに使用されるようになった笹の葉には、抗菌効果や防腐効果があり、その包んだものが「腐敗しにくい」ということから「悪霊などから守られる」との連想につながりました。